「けんかじゃない。ということは、あなたにはもう消滅する道しか残されていないということ?」

 ──びたん。

「なんてこと……でも彼女にはあなたを最期までみとる責任があるわ。こんなところであなたを一人ぼっちにするなんて、いけないことよ」

 だって国の命令なのだから、という言葉をマリーは呑み込んだ。

 ──びたん、びたん。

「何が違うというの……?」

 マリーの質問に、蔦は答えられない。戸惑うように右往左往したあと、何か名案を思いついたように蔦は新たな蔦を伸ばし、先端をピンと尖らせた。
 蔦の先端から、小さな蕾が発生する。蕾はあっという間に膨らむと、ふんわりと花を開かせた。甘い香りを漂わせるそれは、栗色をした薔薇だ。
 見たことのない色をした薔薇に、二人は目をまん丸にして見合う。