受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「考えたくないことだが……俺たちは失敗してしまったのだろうか?」

 失敗。
 ウォーレンの言葉に、マリーはキュッと唇を噛んだ。

 デュークの身に起きていることは、祖母の研究ノートにも書かれていない。
 祖母の時代、魔獣について理解がなかったせいで失敗例はたくさん残されている。
 それでも、この事象の記載がないということは、何か特別なファクターがあるということなのだろうか。

「おばあさまのノートに、恋を成就できなかった獣人が、消滅前に森を形成して引きこもったというパターンはなかったわ」

「猫は死ぬ前に姿をくらますと言うぞ?」

「あら、デュークは馬の獣人ですわよ?」

「そうなんだよなぁ」

「おばあさまのノートに記載がないということは、これは初めての症例なのでしょう。よく観察して、適切に処置しないといけないわ」