今、彼女の前には、三人の客がいる。一般的には多いと言うほどの人数ではないが、一人暮らし用の小さな家には十分多い。それも、三人中二人が長身の男ともなれば、ますます狭く感じるというものだ。

 ソファに座るのは、昨日会ったばかりのマリー。二脚あるダイニングチェアには、昨日レーヴを見事な手腕で誘拐した男と、見知らぬ青年が腰掛けている。

 レーヴは確信した。
 三人目の客である見知らぬ青年。彼こそが、昨日マリーが言っていた獣人なのだろう。なるほど、納得の美形である。

(綺麗すぎて直視できない……!)

 眩しげに目を細めながら、それでもレーヴはなんとか青年を見ようと頑張ってまぶたを持ち上げる。
 レーヴの視線に気づいた青年が、嬉しそうに眦を下げた。

(はぅぅ!)

 危うくカップを落としそうになりながら、なんとか持ち直す。
 お茶を飲んでいますよといった体を装うため、カップに口をつけながら青年を観察することにした。