なにせ、我らが総司令官補佐様は、素手で熊を倒しそうな見た目をしておきながら、おねぇなのだ。残念すぎて悲しい。

 補佐官秘書は補佐官に憧れて、彼の下で働くことを夢みて頑張ってきた人だった。
 だというのに、現実はこれ。中身を知った時は、数日寝込んだ。

 レーヴもきっと、自分と同じなのだろう。これ以上、大事な戦力にダメージを与えてはいけない。そう思った秘書官は、善は急げと立ち上がった。

「補佐官、もうそれくらいにしてあげてください。あんたのせいで総司令部全員が特殊な性癖を持っていると勘違いされたら、生きていけません」

 できる限りキツい言い方をするのは、そうしないと補佐官が動かないからだ。
 秘書官が怒ったフリをしていることがわかっている補佐官は、やっぱりブリッコみたいに頰を膨らませて「ぷんぷん!」と言う。秘書官は無意識に「かわいい」と呟いて、恥ずかしさを誤魔化すように補佐官を睨んだ。