「誰がいるの?」

「総司令官補佐よ」

 総司令官補佐。軍のトップを支える立場の人である。位で言えば、近衛騎士を束ねる隊長より上の立場だ。

「ジョシュアに?」

「いいえ、あなたによ。ジョージがあなたの居場所に心当たりがあるというから、迎えに行かせたのだけれど……その様子じゃ、聞いていなかったのね」

 アーニャは、補佐官に五杯目の茶を出すところだったらしい。
 随分とお待たせしてしまったようだ。これ以上待たせては……いや、今の段階ですでに失礼である。

 レーヴは何度か深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、意を決して応接室へと突き進む。
 そんな彼女を、アーニャが戦地に赴く軍人を見送るがごとく、敬礼で見送った。