「いつまでここにいればいいのかしら」

 エカチェリーナが望むのは、レーヴとジョージの婚約。となれば、レーヴがジョージとの婚約を受け入れることが、脱出の鍵なのだろうか。

「いやいや、無理だって」

 たとえ方便であっても、レーヴはデュークを裏切りたくない。

 人族が扱う魔術の中には、契約を破棄すると死に至るものもあると習った。そして、そういう魔術はこういった密室で、秘密裏に仕掛けられるものだとも。
 迂闊にジョージとの婚約を受け入れた結果、デュークを失うなんてことは絶対にあってはならない。

 ジョージとの婚約を受け入れずにここから脱出し、デュークに想いを伝える。
 レーヴの頭には、それしかなかった。