大陸の北方に位置し、世界でも有数の豪雪地帯であるロスティ国。
 古の言葉で白き地を意味するその名の通り、広大な国土のほとんどは半年もの間、雪で覆われる。

 人々は長い冬の間を確実に生き抜くため、そして少しでも快適にやり過ごすため、あらゆるものを備えることに余念がない。

 国境の大仰な要塞も、幼い頃から男女問わず『優秀な軍人たれ』と教育されるのも、他国から軍事大国と恐れられるのも、すべては冬ごもりの準備に時間を割くためでしかない。
 そこには決して、他国を侵略しようなんていう意図はないのだ。

 小国が乱立し、領地を巡る争いの絶えない大陸にあって、ロスティの広大な土地は魅力的に映るのかもしれない。
 だがしかし、ロスティの国民はみんな思っている。

『こんな国を手に入れたって、ちっとも良いことなんてない』

『そりゃあ私たちはこの国が好きだから住んでいるけどさぁ』

『他国のやつらも、争っていないでさっさと国の中に目を向ければ良いのにね』