受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「休憩時間なら、こんなつまらない王宮ではなく外へ行けばいい。リーナはそうしているようじゃないか」

 アーリャは、エカチェリーナのことをリーナと呼ぶ。それは、アーリャと彼女が幼なじみだからだ。

 王族の剣術指南役である父に連れられて、エカチェリーナは幼い頃から王宮へ出入りしていた。彼に剣を教わるアーリャが、彼女と仲良くなるのはおかしいことではない。
 アーリャの方はかなり彼女に気を許しているらしく、一度は婚約者候補に彼女の名前を挙げたことがあるくらいだ。残念ながら、エカチェリーナは「好きな人がいる」と辞退したそうだが。

「エカチェリーナが? 珍しいこともあるものだ」

「そうだろう? リーナが君から離れるなんて珍しい」