「レーヴが手に入らないのなら……もう、獣人でいる意味などない」

「え⁉︎ ちょっと、デュークくんっ?」

 帰ろうとするデュークをアーニャは必死に引き留めようとしたが、無駄だった。
 茫然自失といった様子の彼はフラフラとした足取りなのに、驚くほど強い力でアーニャを振り払う。
 郵便局の中にいた女性がデュークに気がついて、何人かが勇気を出して話しかけたが、それも彼には届かなかった。

 フラフラと、デュークは王都を歩く。
 集まる視線は煩わしく、デュークは嫌で仕方がなかった。

 振り払うように、駆け出す。
 デュークは王都をただただ走った。
 いつの間にか人の姿から青毛の魔馬の姿になっていたが、構うことなく走り続ける。
 幾人かの近衛騎士が彼を見かけて止めようとしたが、追いつける者は誰一人としていなかった。