「そうだったの。あの子……レーヴはね、おそらくジョージのことで悩んでいるのよ。きっと仕事も手につかないほどなのね。いい加減、出て来てもらわないと困るのだけれど」

「ジョージの、ことで……」

 アーニャの言葉に、デュークの期待は打ち砕かれた。
 やはり、エカチェリーナが言っていたことは本当だったのだ。

 ──レーヴはジョージを選んだ。

 デュークの脳裏に、当て馬という言葉が浮かんで消える。「馬だけに」なんて突っ込んでも、ちっとも面白くなかった。むしろ、気分はより一層落ち込む。
 デュークが地の底よりも深く落ち込んでいる間も、アーニャはなにか言っていたが、もう彼の耳はなんの音も拾おうとしていなかった。

「デュークくん、大丈夫? 顔が真っ青よ⁉︎」

 慌てたアーニャがデュークの顔を覗き込んできたが、それさえ気づかないようにデュークはおもむろに立ち上がる。