レーヴから「早馬部隊王都支部での仕事は平和そのもので、忙しい日はあまりない」と聞いていたデュークは、アーニャがどうしてそこまで疲れ切っているのか不思議でならなかった。
 見る限り、彼女はこの支部でも上位の人物である。そんな彼女を疲弊させるほどの任務とはなんだろうと考えて、思い至った戦争の文字にデュークはわずかに表情を曇らせた。

「なにかあったのですか?」

「うーん……詳細は話せないけれど……大変なことになっているわ」

「大変なこと……?」

「ごめんなさい。これ以上は言えないのよ」

 申し訳なさそうに疲れた顔で微笑むアーニャに、デュークは口を閉ざした。

 これ以上聞いても、彼女は決して話さないだろう。アーニャはあたたかな雰囲気を持つ大らかな女性だが、軍人なのである。国から命令されたら、それに従うのが当然だった。