一度は魔獣保護団体本部へ帰ったデュークだったが、もしかしたらエカチェリーナの勘違いかもしれないという淡い期待が捨てきれず、翌日、再び王都へ向かった。

 往生際が悪いのは重々承知している。だけどやっぱり、簡単に諦められるような生半可な気持ちではないのだ。これくらいは許してほしかった。

 そんなデュークがやって来たのは、レーヴが留守にしている午前中の郵便局だった。この時間、彼女は配達中で昼休みまで戻ってこない。
 デュークはそろりと様子をうかがいながら郵便局へ入り、カウンターへ近づいた。

「すまないが、アーニャさんはお手隙だろうか?」

 カウンターで作業していた女性に声をかけると、女性はデュークを見て飛び上がった。

「あ、ああああアーニャさんですか⁉︎ わっ、わかりました、少々お待ちくださいませ!」

 女性は奥の部屋へすっ飛んでいったかと思えば、すぐに戻って来てデュークを応接室へ案内してくれた。「ごゆっくりどうぞ」と彼女が去った後は、別の女性がいそいそと茶と茶菓子を運んでくる。そんな彼女たちへ、デュークは紳士らしく丁寧にお礼を言った。