胸が痛くて仕方がなかった。
 けれど、彼の胸を満たすのはそれだけではない。

 じくじくとした痛みの奥にほんのり浮かんでいるのは、満足感ともいえるものだ。
 獣人になれて良かった、と。少しだけだったが、彼女のそばに在れて幸せだった。今はただ、彼女の幸せを願うばかりである。

「思い残すことがあるとするならば……彼女とキスをしてみたかったな」

 頭でも、頰でもまぶたでもなく、唇に。
 もう永遠に叶わないが、とデュークは自嘲するように苦く笑んだ。