そんな彼に気の毒そうな視線を送りながら、エカチェリーナは何か言い淀むように口を開いて、後ろめたいことがあるように口を閉じた。

「用件があるなら早く言ってくれないか。僕は今、忙しい」

「……大変申し上げにくいことなのですが……わたくしは聞いてしまったのです。彼女……レーヴが、本当は幼なじみである黄薔薇の騎士との結婚を望んでいた、と」

「……」

 エカチェリーナの話を、デュークはうそだと言い切れなかった。
 ジョージを嫌いながらもレーヴはなんだかんだ彼を遠ざけていなかったし、それになにより、ジョージは生粋の人族だからだ。

「わたくしとレーヴは、訓練学校の時からの友人なのです。卒業後も親しくしておりました。そんな彼女から、相談したいことがあると呼び出されたのです。わたくしはすぐに彼女と会いました。そして、聞いたのです。獣人に恋をされたから、その責任を取るように国から命令されたと。だけど、デューク様とジョージ様の試合を見て、ジョージ様のことが好きだと気づいてしまった。でも、デューク様を見捨てたくない。どうすればいいのだろうと、彼女は悩んでいました」