「わたくしは、エカチェリーナ・ラウムと申します。ロディオン・ラウムの娘、と言った方がわかりやすいでしょうか」

 親近感の正体は、彼女の父だったらしい。

 彼女の父、ロディオンは、元獣人である。デュークが獣人化した際、わざわざ魔獣保護団体へ祝いにやって来た数少ない同類で、そこそこ親しくしてもらっていた。

 しかし、親しくしているのはロディオンだけで、彼の家族とは面識もない。
 今は一刻も早くレーヴのもとへ行って、彼女を抱きしめたい気持ちでいっぱいなのである。
 エカチェリーナなど当然、どうでも良かった。

「父から聞いたのですが……あなたの想い人は栗毛の牝馬の二つ名を持つレーヴ・グリペンなのだとか」

「それがどうした」

 今すぐにでも会話を終わらせたくて、デュークは苛々と答えた。