受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 言葉を切ったエカチェリーナの目から、ポロポロと涙が溢れた。頬を伝い落ちた涙が、月光を反射して真珠のようにキラキラ輝く。
 グスンと鼻をすすったエカチェリーナは、手の甲でグイッと涙を拭うと、レーヴを睨んで言った。

「あなたとジョージ様の婚約を、破棄させてやらない」

「エカチェリーナ。あんた、おかしいよ」

「答えは、はいかいいえだけよ」

 涙声で未練たっぷりに言われても、憎みきれない。
 ベクトルはおかしいが、妙にいちずなところがデュークを思い出させて、レーヴは戸惑った。

(そんなに好きならジョージを籠絡すればいいのに。変なところで獣人っぽくないなぁ)