受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 これも、獣人の血筋の影響なのだろうか。
 思い込んだらそれしか見えないというのは、獣人の盲目的な恋愛と似通っている。

 一体どういうつもりなんだとレーヴが探るように彼女を見ていると、エカチェリーナは「ふん」と馬鹿にしたように鼻で笑った。

「聞こえなかった? 頭が悪いと耳まで性能が落ちるのかしら。仕方がないからもう一度言ってあげる。しっかり聞きなさい!」

 カツカツカツ、とヒールの音を高らかに鳴らして数歩近づいてきたエカチェリーナは、レーヴの低い鼻に指を突きつけて言い放った。

「レーヴ・グリペン! ジョージ・アルストロ様と婚約しなさい!」

 聞き分けのない子どもを叱るようにゆっくり言われても、レーヴは同じ反応しか返せない。
 聞こえなかったわけじゃなくて、エカチェリーナがどうしてそんなことを言い出したのか、その真意を図りかねているからだ。