受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「あーあ……」

 こんな時間に帰宅の途につくのはいつぶりだろう。
 新人時代ならまだしも、すでに数年続けているのになんという体たらく。

「いつもだったらアーニャが叱ってくれるのに……って、それも甘えか」

 こんな調子で良いわけがない。
 軍人として育ってきたくせに、今のレーヴはただの甘ったれだ。

「誰かに守ってもらってばかりじゃない」

 ジョシュアにアーニャ、それから支部のみんなに、デューク。よくよく考えれば、ジョージだってそうだったのかもしれない。わかりにくいけれど。

(そう考えると、ちょっとくらい許してやろうかなって思う……かなぁ?)

 ナイフを投げた卑怯なやり方は大嫌いだし、ジョージのことは苦手だ。
 だけど、長年一緒にいただけあって、気の合うところも多かったりする。本当に合わなければ、逃げる方法などいくらでもあった。