物欲しげな顔をしていたのだろう。デュークが息を飲み、呆れたような、それでいて諦めたようなため息を吐く。

「ねぇ、レーヴ。僕は今日、頑張ったでしょう? だから……ご褒美をもらっても良いだろうか?」

「ごほうび?」

「そう、ご褒美。僕から君に、おやすみのキスをしても?」

「そんなのがご褒美になるの?」

「なるよ」

 ひょい、とレーヴの眼前に迫った顔が、うっとりと微笑む。
 綺麗だなと思って見つめていたら、デュークの顔は見えなくなってしまった。
 涙のあとを辿るように、デュークの唇が頰へ押し当てられる。最後にまぶたへキスを落とされて、レーヴはくすぐったさに「ふふ」と声を漏らした。

「レーヴ。もう、おやすみ」

 自分よりも少し高い体温だ。毛布のようにやわらかくはないけれど、不思議と落ち着く。
 トントン、とあやすように背を軽く叩かれて、レーヴは次第に眠くなってきた。

「大丈夫、安心して。今夜は何もしない。だから、おやすみ」

 デュークの唇が、レーヴの頭頂部の髪をわずかに食んだ。

 癖なのだろうか?
 だけど質問は声にならず、レーヴの意識はゆるやかに沈んでいった。