みっともない方法でごまかそうとしていた当時の自分を思い出して、レーヴは嘆息した。

「もう、やだ……」

 レーヴは寝返りを打つと、胎児のように体を丸めた。

 手の震えは、まだ治らない。
 レーヴは苛立たしげに手をたたきながら、「どうして怖いの?」と自分へ問いかける。

 ナイフなんて、訓練学校でよく使っていた武器だ。ナイフよりもっと殺傷力がある武器だって使ったことがある。

「私は、何を怖がっているの?」

 考えても考えても、答えは出ない。
 泣くことなんて久しぶりすぎて、壊れたみたいに流れ続ける涙を止める方法もわからない。

 レーヴはわからないことだらけだ。

「こんな出来損ないの軍人を好きになるなんて、デュークはどうかしているわ」

 もはや八つ当たりとも言えるようなことを呟きながら、レーヴはスンと鼻をすすった。