抱え込んだ手は、ずっと震えたままだ。
 苛立ちを滲ませ、レーヴはさらに強く手を握る。

 レーヴは自分のことを、同年代の中では優秀な部類だと思っていた。二つ名があるから。

 だけど、それは思い違いだったようだ。二つ名をもらって調子に乗っていたのは、ジョージじゃない。レーヴの方だった。

「栗毛の牝馬だなんて呼ばれていても、ナイフ一つ避けられない……なんて弱い軍人なのかしら」

 情けなくて、悔しくて。感情が振り切れたレーヴの目に、涙がにじむ。

 これくらいのことで泣いてしまう弱い自分が大嫌いだ。腹が立って、涙がますます(あふ)れる。

「栗毛の牝馬って呼ばれるようになったのだって、デュークが魔獣だったから……」