「れ、レーヴちゃん……」

 ジョシュアの、震える声が聞こえる。
 デュークの影からそっと顔を出したレーヴの目に、ヘナヘナと座り込んで涙を流すジョシュアが映った。

 こんな時だというのに、レーヴはぎこちなく笑ってジョシュアに手を振ってみせる。
 そんな彼女に、ジョシュアはますます大仰に泣き出した。

(歳食って涙腺弱くなったのかな)

 おいおいとなくジョシュアを、レーヴは眺める。
 でも本当は、ジョージのことを視界に入れたくなかっただけだ。レーヴはジョージのことが、怖くて仕方がなかった。まさか躊躇(ためら)いもなくナイフを投げるような人物だとは、レーヴも思っていなかったのだ。

 もちろん、軍人として、必要な場面はあるだろう。

(だけど、今じゃない)