混乱するレーヴが連れてこられたのは、古い城を改築したような大きな建物だった。
 案内係に連れられて歩いていくと、地下に続く階段から猛獣の鳴き声というか咆哮のようなものが聞こえてきて、レーヴはぴゃっと飛び上がる。勝気そうな見た目に反し、彼女は意外と臆病なタイプだった。

 通された部屋は、応接間らしかった。
 出された菓子も茶も好きな銘柄のものであり、なんとなく懐柔しようとしている意図が見え隠れしてレーヴは警戒を強める。
 手に取ったが最後、どんな任務を言い渡されることやら。レーヴの脳裏に『最後の晩餐』という言葉が浮かんで消えた。

 訓練学校を卒業して早七年。
 運よく早馬部隊王都支部に配属され、怪我をすることもなく平和な毎日を過ごしてきた。
 軍事大国に喧嘩をふっかけるような国はなかったが、もしかしたら妙な通り名を持っているレーヴに厄介な任務の白羽の矢が立ったのかもしれない。

(魔獣絡みなのは間違いない)