「デューク」

 ただ一言。彼女がその名を呼べば、デュークは忠犬のように従順に、走り寄ってきた。腰から流れる漆黒の尻尾が、嬉しそうに揺れている。さらさらとした毛並みは触り心地が良さそうだ。

 レーヴが冷めた目でそれを一瞥すると、彼女が怒っていることに気づいたデュークは、途端にしょんぼりと寂しげな表情になった。

「なにをしていたの?」

「ジョシュアさんが、レーヴとの交際を認めてほしければ勝負を受けろと」

 苛立ちがにじむレーヴの声に、デュークはバツが悪そうに答えた。

「勝負したの? 老人相手に?」

 レーヴは「信じられない」とデュークを責めるような目で睨んだ。