アーニャの反応に、レーヴは当然だと深く頷いた。
 あんな美形、めったに拝めるものではない。

(そんな美形と馬車に乗るだなんて……やっぱりあれは夢だったのでは……?)

 夢にしては過激な内容だったと思い出して、レーヴはソファへ突っ伏した。
 そんな彼女を追い込むように、ささやかれた甘い言葉の数々が襲い掛かる。

『愛しいレーヴ。誘っているの?』
『君のことが愛しくてたまらないんだ』

 言葉だけじゃない。
 首筋にあたる獣のような吐息、お尻を撫でるいやらしい手の動き。思い出すだけで頭が沸騰して、爆発しそうになる。

 レーヴはゾワゾワし出した首筋から気配を追い出すように、首を何度も擦った。

「首、どうかしたの?」

「ううん、なんでもない!」

 白々しくごまかし笑いを浮かべながら、レーヴはソファから立ち上がった。「これ以上思い出すな」と念じながら、湧き上がる羞恥心を押し込める。