受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 五年前だ。そう昔のことではない。
 なにより、彼女が栗毛の牝馬と呼ばれるようになった所以がそこにある。忘れたくても忘れられないはずだった。

 デュークは、その瞬間を待った。
 彼に見守られながら、レーヴはそっと目を閉じて、気持ちを落ち着かせるように息を吐く。

「青毛の駑馬が、あなただっていうの? デューク」

 レーヴは真剣なまなざしでデュークを見た。
 デュークもまた、そんな彼女に応えるように真摯に見つめ返す。

「ああ、そうだ。あの駑馬は、僕。魔獣だった時の、僕だ」

 レーヴの目が、確認するようにデュークを見た。頭の先からつま先まで、じっくりと確認する。
 デュークは彼女が落ちないように支えながら、静かに見守った。