「懐かしいな」

「懐かしい? これが?」

 ガタンと馬車が揺れて、レーヴの体がわずかばかり傾ぐ。
 デュークは彼女の腰に手を回し、しっかりと支えた。

「前に乗せた時は、こうして支えることもできなかった」

「前……?」

「そうだよ。レーヴ、僕は君を乗せたことがある。五年前……軍事パレードの日に」

「軍事パレード?」

 レーヴの視線が、左上をさまよう。
 過去を振り返っているのだろう。デュークと出会った、あの日のことを。