レーヴは小首をかしげて、馬の目をじっと見つめた。
 馬は、わかったと言うように頷く。

「……まさかねぇ?」

 馬が人の言葉を理解するわけがない。
 多少理解はするかもしれないが、レーヴの言葉すべてが伝わるなんてことはないはず。

 半信半疑で、レーヴは馬に飛び乗った。
 トン、と馬の腹にレーヴの足が当たる。走れ、の合図に、馬は勇ましくいなないて走り出した。
 その速度は、間違いなく近衛騎手の鍛え抜かれた馬よりも速い。

「すごい……!」

 予想外の速さに、レーヴは目を見張った。
 
「こんなスピードで走るの、初めてよ!」

 すべてが吹っ飛んでしまうくらいの、衝撃だった。
 うっかりしていたら落馬しそうなくらい速いのに、乗り心地はちっとも悪くない。
 きっと相性が良いのだろう。

「やるじゃん、見直したよ!」

 この馬が駑馬だなんて、誰が言ったのだろう。
 高揚して頬を染めるレーヴに、馬は誇らしげに嘶いた。