「どうなっているのよぉぉぉぉ」

「レーヴ、走りながらしゃべると危ないよ」

「そんなこと言われても!」

 ぐい、と腕を引かれてレーヴの体が傾ぐ。バランスを崩した彼女の体を引き寄せたデュークは、そのまま流れるような動作で抱きかかえた。

 軽々と抱き上げられて、レーヴの上半身がデュークの肩に乗せられる。
 俵抱き。巷ではお姫様抱っこならぬお米様抱っこと言われている抱き方だ。

「ッ! キャァァァ!」

「レーヴ、静かにして。見つかったら、連れ戻されてしまう。静かにしてくれないのなら、キスをするしかないけれど、良い?」

 そんなの嫌! と言いかけて、レーヴは黙った。
 だって、無理だ。キスなんて、無理。気持ち的にも早いが、なにより物理的に無理だ。
 レーヴの唇はデュークの背中にある。どう頑張ったって、キスなんてできそうにない。