(わぁ……あれはパッサージュじゃない?)

 パッサージュとは、馬場馬術で使う特殊な歩様の一種だ。スプリングの効いた跳ねるような歩き方である。
 レーヴの脳裏に、パッサージュについての解説が流れた。現実逃避していたに違いない。

「レーヴッ」

「うわっ!」

 デュークはレーヴの体を情熱的に抱きしめ、そのままくるりくるりと回ってみせた。
 熱愛中の恋人たちだってしないような行為を体験し、現実逃避して意識が飛んでいたレーヴが我に返る。
 そんな彼女にデュークはさわやかに微笑みながら、

「じゃあ、行こうか」

 と言った。

 デュークに手を引かれ、レーヴは走り出す。
 訳がわからないまま猛スピードで走ることになって、彼女は叫んだ。