前に来た時は馬車に乗っていたので気づかなかったのだが、魔獣保護団体本部は高い塀で囲まれていた。
 人を襲う魔獣も保護するような場所なので、万が一のことを考えてのことなのだろう。

 ここは、王都からも随分離れている。
 辻馬車で行けるところまで乗って、そこからは徒歩。ようやく見えてきた外壁に沿って歩きながら、レーヴは入り口を探していた。

「マリーさんに連絡を取って、迎えに来てもらえば良かった」

 レーヴが後悔し始めたその時だった。急に塀の中が騒がしくなり、ついには警鐘が鳴り響く。

「えぇ⁉︎ もしかして、魔獣が逃げた?」

 前回連れて来られた時に聞いた魔獣の咆哮を思い出して、レーヴは顔をしかめた。
 正直、怖い。すごく、怖い。

「でも、ここで逃げるのは軍人の名折れよ……!」

 なんてったって、レーヴは栗毛の牝馬なのである。
 早馬部隊は実戦向きの部隊じゃないし、レーヴは休日に武器の類を持ち歩くほど熱心な軍人ではないが、なんとかしなくてはならない。