「聞いてくれる? 私には幼馴染みの男がいるんだけど……そいつに恋をしている女の子がいてね。しかもその女の子はなぜか私に意地悪をしてくるんだ。今日も朝からいろいろされて、疲れちゃった。これから王都で軍事パレードがあるっていうのに、私はこんなところにいるのよ? はぁ……嫌になっちゃう」

 寄りかかるように青毛の艶やかな肌に頬を押しつければ、ひょいと頭を下げてきた馬に頭のてっぺんを甘噛みされる。
 レーヴは、くすぐったさに身を竦めた。
 よしよしと頭を撫でるようなしぐさは、本当にわかっているように見えるから不思議である。

「ねぇ、私を連れて行ってくれない?」

 無理なのは重々承知だ。
 レーヴが普段乗っている馬だって、きっと無理。
 それでも、無様な姿を晒すよりは、慰めてくれた心優しい馬に希望を託してみる方がマシのように思えた。

「お願い」