「それまでにあたし、記憶を思い出す。それで、里桜さまとともに竜神さまを起こすから!」


 未晩に甘やかされたまま、怖い夢や漠然とした不安など、いままで彼が飼っていた闇鬼にぜんぶあげていたけれど。
 それじゃあいけないんだとぎゅっと拳を握りしめる。

「それから、大樹さまを探すお手伝いもするし、竜神さまに認められる花嫁になれるよう修業もする!」

 目の前にいる彼に誓いたかった。迷惑だと思われても、声にだしてこの決意を伝えたかった。竜神が眠りにつく前から守人をしている彼のために、自分が役に立ちたいと思った。

「お前……なぜそこまで」

 困惑する表情の夜澄を見ても、朱華の気持ちは変わらない。彼が自分たちの『雲』の民を見捨てたことを後悔している姿を、責めるのは見当違いだ。そんなことをしても死んでしまった命は還らないのだ。それならいま、自分にできることをして、雲桜のような悲劇を防ぎたい。


「なぜって。もう誰にも死んでもらいたくないからよ?」


 当然のように返す朱華に、夜澄が呆気にとられている。
 もう誰にも死んでもらいたくない。朱華の心の奥底から自然と湧きあがるように生まれた言葉。それは記憶がない状態でも、揺らぐことのない、本心だった――……