時給三00円の死神

「近い内に人を行かせますよ。それではごきげんよう」


次の瞬間。

もうそこには男はいなかった。


雨に溶けるよう。

人混みに混ざるよう。


最後まで笑顔を絶やさなかったその影は、
あっさりと雨の向こう側へと消えていった。


残された俺は立ち尽くす。

いつの間にか灰色の恐怖は消えていた。


これが、非日常とのなんだかよく分からん邂逅だった。








「それではお邪魔しまっす!」


「おい、ちょっと」


そして翌日。


時刻は午後五時。

半端な曇り空の夕刻前。


俺は、昨日の出会いが、夢ではなかったと思いしる。


「待てって。何で勝手にあがりこんでいるんだ」


「へぇー結構汚い部屋に住んでいるんだね」


「言っとくけどしっかり傷ついたからな」


中々に無礼な事を言う花森さんは、何食わぬ顔でちゃぶ台の前に座り込む。


艶やかな髪は眩い木漏れ日のよう。