雨の罵声。

人のうねり。


どれが原因なのかは知らないが。


とにかく俺は雨の横断歩道を前に、
借金まみれの人生に嫌気がさしていたのだ。


六月は雨は鉛のように重かった。


「おや、随分と人生が生き詰まっていらっしゃる」


「え」


そんな俺の前に、そいつはふらりと現れた。


真っ白な傘に真っ白のカーディガン。

やけに白い顔は不気味に笑っている。


まるで最初からそこにいたとでも言わんばかりに、その男はこちらを見つめていた。


嫌な予感がする。


果たして俺の勘は当たっていたのだろうか。


「おたすけしましょうか。あなたにぴったりの仕事があるんですよ」


「仕事?」


横断歩道の向こう側で、男はそう告げる。

届くはずのない声は、不思議と俺の内側から聞こえてきた。

心臓を捕まれたようでぞくっとする。


それに対し、俺はなんと応えたのだろうか。


いやにくっきり響くその声は、ひょうひょうと俺に手を振るのだ。