「それじゃあ君を死神として採用するね」


「は?」


玄関の扉を開けた先にて開口一番、
花森雪希(はなもりゆき)はそう告げた。


クラスメートとはいえ、ろくに会話をしたことがない少女にこう言われて「はいそうですか」と応じる奴は果たしてこの世界にいるのだろうか。

少なくともここにはいない。

いてたまるか。


だけどこんなことを言われる心当たりは
一応あった。


思い出すのは昨日の事。


雨音の記憶を呼び起こす。






昨日の俺は、一言でいうなら
「これからどうすればいいんだろうか」と、そんな感じで雨にうたれていた。


あまりにも唐突に振りかかる、得体の知れない不安と恐怖。


灰色のビルの群れ。暗い傘の澄みきった渦。