そう。


だけど。


「それでも君にこの仕事を進めたい」


墓標のように佇む彼に、俺は命を吹き込んでゆく。


このアルバイトは最悪だった。


でも、同時にかえがえのない何かを手にすることも出来たんだ。


俺の前から消えていった、たくさんの人々。


誰もがみな、煌めく希望をくれたんだ。


「知っておいて欲しいんだ。この世界に素敵な人たちがいたことを」


きっともう、誰にも紡がれる事のない物語。


降り注ぎ、消えゆく雪のような物語。


それを今、君に伝えよう。


雪の中、俺は記憶の1ページをはらりとめくった。