七色の魔法使い#特別編~大きな虹を描いて~

あの子は……僕が過去に来た時に見かけた子だ……。

「……ねぇ」

僕が声をかけると、水色髪の子は僕の方を振り向いた。ハイライトの入ってない青い瞳が僕を捉える。

……多分、彼女が未来のアイビーが言ってた黒幕かな?彼女からは、妖魔の気配がする。

「誰?」

「僕は、冬都。あなたを助けに来ました」

「……私を助けに……?」

何を言ってるのか分からない、と言いたげに彼女は首を傾げた。

「はい。僕は、あなたが妖魔に捕まっていると聞いて探しに来たんです」

……悪いけど、未来のアイビーから頼まれた、なんて言えないから嘘をつかせてもらうよ。

「助けなんて必要ない。私には、テオ様がいればそれで良い。私にとって、テオ様は大切な人なんだ」

「そんなことはありません。あなたには、テオよりも大切な人がいるはずです」

「……」

僕の言葉に、彼女は黙り込む。しばらく黙り込んだ後、彼女は口を開いた。

「……大切な人は、テオ様以外いないけど」

……思った以上に難しいかもしれないな。彼女は、完全に記憶を失ってる……。

「ねぇ、もう良い?私、そろそろ帰らないと……」

僕に背を向けて、彼女は歩き出そうとする。

「アイビー……この名前、聞き覚えない?」