すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜



この罵声。



あの時と、何も変わってない。



こいつは、私達に意思はないといつもそう言っていた。



奈子も、体力と気力の限界だった。


ここは、田舎だからここに来る人の数は元々少ないし、市役所の職員も滅多に外へは出てこない。



誰か…



助けて。



外で始まる、こいつからの暴力。



私のことを、庇う奈子。



だけど、私も奈子を守りたい一心で行動していた。



痛い、苦しい。



こんな感覚、久々だった。



「お前、でかい口叩いてた癖に弱わいな。


ここは、人も来ないからたっぷり遊べるとっておきの場所なんだよ。」



奈子にトドメを刺すかのように、刃物を向ける父親。



奈子に降りかかった時、私は咄嗟に奈子に覆いかぶさっていた。



背中に貫通する刃物。



男と女の重なり合う、汚らしい笑い声。



次第に薄くなっていく景色。



あれ…



痛みがなくなってきた。



「こいつ、もう死ぬぜ?


お前、俺と同じ犯罪者だな!


お前のせいで、こいつは死ぬ。


無様だな。」



奈子のことを蹴り飛ばし、その男と女は去っていった。



刃物で刺されたのは2回目で、前にも刃物を首に突きつけられ切られたことがあった。



「沙奈…。


沙奈、しっかりして!!


あんた、どうして…。」



奈子は、私の体を半分起こし刺されている所を強く布で押さえてくれた。



それから、救急車が到着し救急隊員の顔を見た安心感からか、私は意識を手放し深く暗い闇の中へ落ちていった。