すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜

ーside 沙奈ー




奈子ちゃんの話を聞いてから、私はずっと考えていた。



私は、こうやって父親の話を持ち出される度に心が動揺し、苦しい思いをしなければいけないのかと。



それに、高校生に上がってからずっと不安に思っていたことがあった。



高校を卒業したら、私は1人になってしまうのではないかということ。



紫苑や、翔太は私がまだ小学生だったからあの日、私を引き取ってくれた。



高校生になったから、それ以降は私も独立しなければいけないのかと。




2人の手が、離れてしまうのではないかって心配になっていた。




月日の流れには逆らえないから、自分が年齢を重ねていくに連れて不安も大きくなっていたのかもしれない。



心なんて、まだまだ成長できてない。



過去も、完全に乗り越えられていない。




過去の話を持ち出される度、怖くて目を逸らしたくて仕方なかったんだ。



このままではいけないという気持ちと、過去と向き合うことが怖いという気持ちが複雑に入り組んでいて、何の罪もない大翔先生達に当たってしまった。




だけど、これからも傍にいて味方でいてくれるという紫苑や翔太、大翔先生の話を聞いたら、少しだけ心が楽になった。



私は、1人ではないんだと気づくことが出来た。



過去のことに、終止符を打とう。



これから、父親と何かがあるっていうわけはないと思うけど、過去に苦しめられる日々から解放されたい。



そのためにも、このもやもやを無くすためにも、奈子ちゃんから詳しく話を聞いてみよう。



それと、加須見先生という人からも話を聞いてみようと思う。



このモヤモヤはきっと、奈子ちゃん達とあの父親の繋がりが気になるからだと思う。



「大翔先生、きつく当たってごめんなさい。


それから、紫苑も翔太もこんなにいっぱい泣いちゃってごめんなさい。


私、頑張ってみる。過去から逃げない。」




「泣くことは悪いことじゃないんだよ。



沙奈が、こんなに感情を見せてくれた事に安心したんだ。



だから、何も謝ることは無いよ。



だけど、1人で泣くのは禁止だからな。


それから、我慢するのもダメだよ。」




人前で、泣いてもいいの？



父親の前で泣く度に、私への暴力は酷くなっていった。



だから、私は人前で泣かないように気をつけていた。



泣いたら、人に迷惑をかけると思ったから。




背中をトントンされながら泣くことなんて今までに1度もなかった。



誰かの腕の中で泣くことも…




だけど、どうしてもこの3人の前だと感情にブレーキがかけられず、全部表に出てしまう。




最初は、その事に罪悪感があったけど、それは3人の言葉にかき消されていった。



それだけ、紫苑達の言葉には優しさや温もりがあって冷えきった心を包み込んでくれるような安心感があった。