「沙奈…。」
「私、ずっと考えてた。
どうすれば、あの人と繋がりが無くなるんだろうって。
考えたけど、無理だった。
どんなに考えても、血縁関係であることは間違いないし、結局今は離れてるけど親子の縁は切れないんだよ。
どんなに否定しても、否定されたとしてもあの人が父親でしょ?
その事実は変わらない。
変えることもできない。
切れるわけないんだよ。」
本当にそうなのか?
それだけが、全てではないだろう?
「沙奈…
例え、血の繋がりがあったとしても父親は沙奈を育てることを放棄した。
これは、立派な犯罪だ。
その時からきっと、沙奈とその人との関係は切れてるんじゃないのかな。」
「そうですね。
私を育てなかった。
その事実も、変えられませんね。
だけど、あの人との血筋がある。
過去に関わっている。
それが、身体の傷跡としてはっきりと分かる。
これを見ているだけで、胸が苦しくなるんです。
早く、1日でもあの人を思い出さない日が来ればいいのに…。
どうすればいいの…?
教えてよ…。」
涙を流しながら、俺の腕を揺さぶる沙奈。
俺はすぐ、その手を止め沙奈の体をもう1度自分の方へ抱き寄せていた。
「焦ってすぐに答えを出さなくてもいいんだよ。
過去と決別することは、相当体にも心にも負担がかかる。
沙奈。これからも生きていく上で理不尽なことはたくさん起こる。
でもな、どんなに悔しくても苦しくても辛くても前を向いて生きていかないといけないんだ。
それに人生には、数多くの壁が立ちはだかる。
だけど、逃げて通ってばかりではダメだ。
乗り越えていかないといけないんだ。
だから、ゆっくり考えて一緒に乗り越えていこう?」
「だけど、私。」
「大丈夫。
沙奈、お前はもう1人じゃないだろう?
沙奈の周りには紫苑や翔太、俺や冨山さんがいる。
みんながついているから、沙奈は乗り越えられるよ。
沙奈が、折れそうになったり間違った道に進まないように俺達はそばにいるから。
沙奈が、どんな答えを出したとしてもそれは変わらないから。
いつでも、1番に俺達は沙奈の味方だし何度でも助けるよ。」
これからも、沙奈と生きていくために沙奈を支えていきたいんだ。
この手を離したくない。
一緒に幸せになるためにも、苦しみから逃れてはいけない。
悲しみから目を背けていたら、きっと沙奈は一生悲しい過去を抱えて生きていかないといけない気がするんだ。
だけど、傷つけられた過去があるから今の沙奈がいることも確かだ。
どんな沙奈であっても、俺はたまらなく君を愛おしいと思う。
「そばに…いてくれるの?
紫苑と翔太も、ずっとそばに…」
「当たり前だ。
どれだけ沙奈のこと、大切だと想ってると思ってるんだ。
沙奈は、この命をかけてでも守っていきたい。」
「紫苑…。」
「沙奈を引き取る時から、沙奈の笑顔は俺たちの元気の源なんだよ。
これからも、沙奈と暮らしていきたい。
沙奈と一緒の時間はどれも幸せなんだよ。」
「翔太…。」
「もう自分を楽にしてあげな。
沙奈、俺はこれからも変わらず沙奈を守っていきたい。
これからも、沙奈から離れることは絶対にないから。
安心してほしい。俺も、頑張るから。」
「大翔先生…。」
俺も、紫苑や翔太のように沙奈に認めてもらえるように沙奈のことを支え守っていく。
きっと、もっと前から1人になる不安を抱えて生きてきたのだろうな。
求めたけど叶わなかった親の愛情。
ずっとずっと心の奥底に溜め込んできた感情。
怒りや悲しみ、不安や悩み。
沙奈、きっと今ある壁を乗り越えることができたら今よりも強くなれる。
この苦しいほどに愛おしく、大切な温もりは俺がどんな時でも守るから安心してほしい。
一緒に幸せになろう、沙奈。


