結局の所全て、

「倦怠期は直樹次第なんだよなぁ」
『何?』

1時間ほどで会議を終えたらしい彼が書斎から出てくる。
私は全然仕事が捗っていなかった。

『どした?』
「ううん、考え事」
『…俺なんか嫌なことした?』
「ちが、違う違う!直樹は何も悪くない!その…」

あれ、なんでこんなテンパってるんだろ私。
自分から彼にキスをするなんていつもやらないようなことするから、自分の脳みそも溶けてしまったのだろうか。

『嫌なことあったら直すし、史瀬が、悩んでんのやったら言える範囲でええから。 なんか俺にできることない?』

優しい彼が私に近づいて目線を合わせてくれる。
なんだかこんなにも大切にしてもらってるのに、私は何も出来ていないと思うと、複雑な心情が涙という形で体外に出てくる。

「直樹、ごめん」
『どうしたん?泣かんといて?俺も泣いてしまいそうになる』
「直樹は悪くないから泣かないで」
『じゃあ史瀬も悪ないから泣かんといて』

両手で私の顔を覆って、涙を拭いてくれる。

「いつか私たちに倦怠期がくるなら、それは私が直樹に愛想つかされる時だなって考えてたの」
『愛想なんかつかさんよ』
「いつも直樹は愛情表現してくれるのに、私は照れくさくてちゃんとできないし」
『それを分かってるから付き合ってるんやんか』
「でも、私よりも直樹みたいに素直に好きとか言える子の方が絶対可愛い」
『もう、誰と比べてんの?俺には史瀬以外に可愛いと思える子なんておらんよ?』