____俺、前世の記憶あんねんって言ったら史瀬は信用してくれる?



『なぁ、構ってや〜』

甘えん坊な彼氏がテレワーク中の私によっかかってくる。

「もう、仕事中だよ」
『分かってんねんけどさぁ』
「自分だって10分後に会議でしょ?」
『んーーー史瀬のケチ』

そう言ってムッとした口をする彼。

大学で知り合って付き合い始めてからもう5年になる。
職場は別だから、お互い一人暮らしをしていたのだが、1年ほど前から一緒に暮らし始めた。
当時から、同棲したら倦怠期が来る、なんて友達に心配されていた。
その時はその時だと流れに身を任せていたけど、彼となら倦怠期なんか迎える暇も無さそうだと最近つくづく思う。

「もう会議の準備できてるの?」
『おん、書斎の方にセッティングしてあるで?』
「じゃあ、コーヒーいれてあげるから持っていきな」
『ほんま?ありがとう』
「今日もお仕事がんばろうね」

さっきまでムッとしていた口に私の口を押し当てて、逃げるようにキッチンへ行く。

『え!チューされた!待ってかわいい!』

大声で悶える彼は、コーヒーを入れて書斎へ行くと仕事のできる1人の会社員に戻る。
彼はいつも私に全身全霊で好きを表現してくれる。
私は恥ずかしいから、適当にあしらってほんの少ししか返せない。
私もあんなに器用だったらいいのに、と彼を見て思うことは多々ある。
私は彼を嫌いになることないし、 いつも好きと言ってくれる彼に愛想を尽かすことなんてこの先ないと断言できる。