年下の男の子なんて、年上の女性は3割増しでよく見えるものなのだろう。
現にこのシロクマのような大型犬のような、 目鼻立ちのしっかりしたモデル体型の幼馴染がそうなのである。

『志乃ちゃん!今日空いてる? 僕ね、新しく出来たタピオカ飲みたい!』
「篤志?そういうのは同級生と行く方が絶対にいいよ?」
『ねえやだ!志乃ちゃんがいいの!』

だめ?と言われた暁には、ダメだなんて強く断れなくて結局いいよ、と言ってしまう。
年下のくせに振り回しよって。

私と彼は4つ離れており、中学も高校も被ることはなかった。
でも、家が近いこともあり昔から一緒に遊んでいて、仲は良かった。

彼はよく私に懐いてくれて、好意を持たれている。
それはきっと彼には居ない姉のようなポジションだと、 私の頭では理解している。
そりゃあいつでも頼れる存在なんて、彼にとってみれば安心材料だろう。
でも、だからこそ虚しさを感じることが時としてある。
本当に彼に振り向いて欲しいのは、私の方なのかもしれない。

ある日、大学から帰っていると、一際背の高い彼をすぐに見つけた。

「篤…」

そう呼び止めようとして、やめた。
隣には同じ制服を着た女の子が歩いていた。
華奢で、スカートが膝より少し短く、髪の毛は黒く真っ直ぐで、 ほんのり血色づいたリップだけの可愛らしい子。

くるぶしまであるワイドパンツに、 色の抜けきった茶髪、 そして顔には高校時代の面影がないほどメイクを施した私。

「やっぱり、彼の隣にいるべきなのは私じゃない」

そうは言っても、彼へ馳せる想いだったり、あの時女の子と仲睦まじそうに歩く姿だったりを思い出しては、 1人頭を悩ませていた。