私は水面を泳ぐ白鳥だ。
…と言っても、きっと誰も信じてくれはしないだろう。
私も以前までは人間だった。
しかし、ある日花を摘んでいた私を悪魔が白鳥の姿に変えた。
ただ魔力は永続的ではなく、夜の月明かりが差し込むほんの一時だけ、私は人間に戻れるのだった。

ある日。
夜に差し掛かった頃。
私たちが水面を泳いでいると、何やら他の鳥たちがうるさい。

____パァン

狩人だ。
狩人の鳴らす猟銃の音だ。
急いで逃げなければ。
私は湖のほとりへ行き、月明かりの力を借りて人間の姿に戻る。
すぐさま小屋へ逃げるが、どんくさい私は転んでしまったのだ。

『…誰かいるのか』

狩人らしき人が、銃を向けてこちらへ歩みよる。
林の中を月明かりが照らす。

「…私はこの林に住む者です」
『…あなたは』
「波美と申します」
『私はこの国の王子、青羽龍斗だ』
「王子、様…」
『狩猟を嗜んでいた時に、湖のほとりで君を見かけて。 その、見てしまったんだ…。白鳥から人間の姿になるところを』
「そんな」
『大丈夫、誰にも言わない。誰にも話さないから。



僕と友達になってくれないか』

彼に月の光がさしこむ。
とても綺麗な肌に、整った顔立ち。
私はこの人に一目惚れをした。
これが彼との出会いだった。