もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「羽虹は…神様っていると思う?」

自分一人で答えの出せないことは、友達に聞いても良い。

天沢がそう教えてくれた。

だから、勇気を出して聞くことができた。

「…そうだねぇ、なんとも言えないなぁ。

でも、もしもいるのなら好きには絶対なれないよ。

神様は意地悪だもん。

頑張ってる人の、これ以上ないくらいに苦しんでいる人の、傷口を抉ってくる。

気まぐれなサイコパス神様だよ」

羽虹は何かを誤魔化すかのように、冗談めかして笑った。

誰かを思うように、空に目線を送りながら。



羽虹の心の中にいる、その人は誰なんだろう。

羽虹は、その人を救えなかったんだろうか。




…私も、羽虹に言えないことがたくさんある。


触れてほしくない部分。

見られたくない過去。

知られたくない心。


そんなの、誰相手にでも数え切れないほどある。


だから…敢えて聞かないし、聞けない。



でも、私は…


「運命、とかそういうの、わかんないけど…

私は、羽虹と同じ年に生まれて、同級生になれて、しかも同じクラスになれたことは奇跡だなぁって思う。

神様にも羽虹にも感謝してるよ」

あの時、あのビルに来たのが天沢だったことだって…これ以上ないくらいの奇跡だ。

良かった。

本当に──

「もー!嬉しいこと言ってくれるじゃん!あーもー好き!!雨音好きー!」

ぎゅっと後ろから抱きつかれる。


──雨音、だーいすき!!

七菜香のことを一瞬だけ思い出した。

でも、すぐに目の前にいる羽虹だけを想う。



さよなら、七菜香。

もう良いや。

貴方と出会えて良かったよ。


天沢と…羽虹と、出会わせてくれて…



ありがとう。



もう私の心に、貴方はいらない。


ばいばい。



「ありがとう、羽虹。

あの時声をかけてくれて。私も大好きだよ」


眩しい太陽が沈みかけた空には、もう雲ひとつなくなっていて。


強烈な光が、今度こそ暗闇を切り裂いたように感じた。