もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「…さっき、お礼くらいって言ったけど。あれは嘘。ずっと言おうと思ってたのに、言えなかった。小野さんにも、羽虹にも」

私は切なげに髪を揺らす天沢が消えてしまわないように、早口で喋る。

照れ隠し…ではないと信じたい。

桜の花びらが温かさに吸い寄せられるかのように、天沢の肩に着地した。

「でも、さっきは恐ろしいほどにさらりと言えたの。天沢があまりにも温かいから。

私は天沢に助けられた。あの時、天沢が引き留めてくれて話を聴いてくれたから、羽虹と出会えた。

でも、それだけじゃない。まだ全然だけれど…素直さとか、優しさとかもちょっとだけ貰ってる。

そういうの全部含めて、ありがとうって言ったの。

だから力になれてないっていうのは、違う」


天沢と出会ってからの二ヶ月は、本当に色々あった。

でも、彼に傷つけられたことは一度もない。

助けてくれて、優しくしてくれて、笑顔を見せてくれて。

本当に、ありがとう。



天沢は優しい。

土砂降りの雨の中、寒さを嫌がることなく私の隣にいてくれた。

私の話を口を挟まず、安心させるかのように優しく相槌を打って聴いてくれた。

私がどんなに卑屈なことを言っても、突き放さずにそばにいてくれた。

毎週毎週、懲りずに私に話しかけてくれた。

時には、私のおすすめの本までわざわざ買って読んでくれた。

誰にも言えなかったことを、私の心の奥底から引き出してくれた。



私に、信じたいと思わせてくれた。



絶対に人なんか信じないと思っていたのに、君の優しさは私を変えたんだ。