外に出て、約十分後。
私たちは公園のベンチに座っていた。
休日なだけあって、人は多い。
ここの公園は幼い子供達に「桜公園」と呼ばれているだけあって、桜の木がかなりの存在感を発揮している。
お花見に来ている家族も、片手で数え切れないほどにいた。
薄い桃色の桜が舞って、人々に優しく降り注ぐ。
まるで幸せを贈るかのように。
大人達はお酒を口にしながら桜を見上げたり話したり、のんびりと時間を過ごしている。
小さな子供達は、舞っている桜の花びらを手に乗せようと必死だ。
でも桜は、子供達を弄ぶかのようにひらひらと自由自在に動き回る。
幸せに満ちた、平和な光景だった。
隣に人一人分の間隔を空けて座っている天沢を盗み見すると、元気に走り回る小さな子供達を見ていた。
子供が好きなのか、微笑ましそうに視線を送っている。
私は、言うなら今だと思った。
言うべきタイミングなんてわかんないし、遅くなってしまった自覚もある。
でも、それでも…言わなきゃいけないと思った。
何より、自分自身を変えるために。
「天沢」
最近、一番口にしているであろう名前を唇に乗せる。
頭上の桜の木の花びらが、私たちの間をひらひらと舞い降りた。
「羽虹…真白羽虹って知ってる?」
私の緊張が伝わったのか、天沢は何も言わずに静かに頷いた。
でも、真剣さに溢れるその顔も今まで見た誰よりも端麗で、眩しすぎる。
この二ヶ月間見てきた私服も、毎週違う服でかなり高そう。
何着持ってるの、というバリエーションの多さ。
シンプルなのに誰よりもお洒落に見える、素晴らしいセンス。
でも、なによりも眩しいのは服でも顔でもなく…
いや、顔かもしれないけれど…。
こうやって大事な話を切り出した時に、私が話しやすいように静かに相槌を打ってくれる。
私にとっては、天沢から溢れ出るそんな優しさが、今まで見た何よりも眩しい。
