もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「あのね、水瀬さんって去年も廊下側の席だった?」

「え、まあ…うん」

苗字が「水瀬」で出席番号がかなり遅い方なので、今までずっと廊下側の席だった。

唐突に放たれた変哲のない質問。


…何が言いたいのか、さっぱりわからない。


真白さんは私の葛藤なんて知らずに、嬉しそうに頬を緩めてやっぱり?と弾んだ声を上げた。

「私去年一組だったから、よく二組の前を通ってたんだけれど…」

一年一組の教室は校舎内で一番奥に位置する。

だから移動教室の際は、二組や三組の前を必ず横切らなければならない。



頭の隅っこで、そういえば天沢も一組だったな、とどうでも良いことを考える。


「それで、水瀬さんが読んでた本の表紙が見えて…」

私は少しだけ話がわかってきて、静かに相槌を打った。

本好きな女の子か。

…仲良くなれたりするのかな…って自惚れすぎか。

「大好きな作家さんだったから、仲良くなりたいなぁって思ったの!」

仲良く…って…友達ってこと?

「え、私で良いの…?」

学校で読む本はあの人の本だけと決めているので、すぐにどの作家さんかわかった。

あの作家さんはそんなに有名ではないし、同じ趣味の人に会えることなんてないとずっと思っていたので、心の中は喜びでいっぱい。


だが、それとこれは別の話だ。

同じ趣味だからと言って彼女を信じることもできない。

逆に彼女も、私なんかと一緒に居たいと思えるわけがない。


そう思ったのに、彼女は大きな瞳を揺るがせて体を乗り出し、距離を縮めてきた。

「ううん、水瀬さんが良いの。だめ…かな」

不安そうな表情が、捨て犬のようで可愛い。

美人な七菜香とは違う可愛さに、少しだけ気を許してしまった。

「いや…私でよければ…嬉しいけど」

「本当?ありがとうっ、改めてよろしくね」

真白さんは心底嬉しそうに、にこりと微笑んだ。








高校生になって初めての友達。

七菜香のことがあったせいで始めは信じられるわけがないと思っていた。


でも。

彼女と話している時間はそれを感じさせないくらいに充実していて。

そんなこんなで、私の高校生活は一年遅れて始まったのだ。