もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「すっげぇ、なんか良いこと言ってんな」

「さすが王子様…かっこいい…」

誰もが尊敬の眼差しで天沢を見ていた。

私の知っている天沢は、ほんの一部でしかないことを思い知る。

「もう、俺が口挟む余地ないな」

先生までが感嘆に満ちた声で、天沢を称えた。

天沢はどこか切ない笑みで、ありがとうございます、と頭を下げる。

誠実で、優しくて、謙虚で…

本当に天沢って人間なのだろうか。


「津谷先生、今後の打ち合わせでちょっと」

「あ、今行きます」

二組の担任の元へ津谷先生は駆けていってしまう。

その途端、教室はざわめきに包まれた。

「天沢すげぇ、何、今考えついたん?」

「重い話になってごめんね。いきなりだったから、頭にあることそのまま言っちゃった」

「マジで?でも、なんかこう…心にグッとくるもんがあるよなーお前が綴る文章って」

天沢は一人一人に丁寧に返事を返して、お礼も忘れない。


私は見ているのがバレたら何となく気まずいな、とまたもや目を閉じて頬杖をつく。


廊下側の席はあまり好きじゃない。

他教室から声が漏れてくるし、暇な時に外を見ることさえできないから。

でもまあ…一番前だったり、真ん中の列だったら最悪だからギリギリ許容範囲だろう。


「あの、」

私の不恰好な耳に、可愛らしい小鳥のような声が届く。

優しい声だけれど、騒がしい教室の中にいてもしっかりと耳に届く、芯の強い声。

自分に向けられたものではないだろう、と思ったけれども、千分の一くらいの可能性は無きにしも非ずなので一応目を開ける。

すると、前の席の小柄な女の子が椅子ごとこっちを向いていた。

…え、私なの?

「私、真白 羽虹(ましろ はな)。一年間…ううん、これからよろしくね」

差し出された小さな手を、私は恐る恐る握る。

握手するのはいつぶりだろう。

「えっと…私は水瀬 雨音。よろしく…」

なんとか出した声は、やっぱり耳を塞いでしまいたいほどに醜い。

それに、心のどこかで「彼女を信じることができない」と思ってしまっている。


──私なんかに、関わらない方が良いよ…。